漢方基礎講座
13. 生薬の基本作用(4) 帰経


IV. 帰経

  「帰経(きけい)」とは、薬物が人体のどの部分(適用範囲)に作用するかを指し、薬効が表れる作用部位を示しています。 これは「経絡(けいらく)学説」と「臓象(ぞうしょう)学説」に基づいています。

 中医学では、「経絡学説」は人体の経絡系統の生理機能、病理変化、臓腑、気血津液との相互関係を研究する学問で、中医薬学理論の 重要な構成部分とされています。

「経絡」は、内が臓腑に属し外が手足につながっており、人体の内外をつなぐ通路とされています。

中医薬学では、「経絡」は疾病部位を見分ける手がかりで、薬物の作用の落ち着き先(作用部位)とも言われ、薬物の帰経の重要な根拠となっています。

 中医学では、「臓象学説」は人体の臓腑の生理機能と病理変化の相互関係を研究する学問とされています。

人体の生理機能を知るだけでなく、疾病を見分ける重要で、中医薬学の帰経理論の基礎となっています。

    参考 ⇒ 05. 五臓(1) 心・肺・脾   06. 五臓(2) 肝・腎

  すべての薬物は形・色・気・味などの異なる特徴を持っており、これが帰経の根拠となっており、以下に示すように、五味と帰経の関係が 最も密接であるとされ、五行理論と一致しています。

    参考 ⇒ 03. 五行とは?

   (1)味が辛、色が白の薬物は、肺経や大腸経に属する(肺や大腸に作用する)
   (2)味が甘、色が黄の薬物は、脾経や胃経に属する(脾や胃に作用する)
   (3)味が苦、色が赤の薬物は、心経や小腸経に属する(心や小腸に作用する)
   (4)味が酸、色が青の薬物は、肝経に属する(肝に作用する)
   (5)味は鹹、色が黒の薬物は、腎経や膀胱経に属する(腎や膀胱に作用する)

 帰経理論は、薬物の治療作用と病理変化、臓腑経絡にある部位とを有機的に結びつけているため、中医薬学では、帰経理論を把握することが 用薬指導にあたって重要な意義を持つとされています。


(by 漢方アドバイザー・PhD.Ar)

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