05. 五臓(1) 心・肺・脾
<五臓(心・肺・脾・肝・腎)>
中医薬学では、「心」、「肺」、「脾」、「肝」、「腎」を総称して『五臓』といい、五臓の各機能は、 それぞれ協調すること(相生、相剋)でバランスを保っており、これは前述した『五行学説(木・火・土・金・水)』
(「
03. 五行とは?」を参照)により説明することができます。
中医薬学でいう「臓」は、現代西洋医学での解剖学的な「臓器(内臓)」とは一致せず、より広い人体の「機能」を
意味しています。
I. 心(しん)
・ 心は、血流により身体を温める作用を持つため、五行では「火」に属し、経絡を通じて六腑の「小腸」と密接に関係します。
・ 心臓の拍動による血液の正常運行の維持や、血液の生成を行います(主血脈)。
⇒ 心の機能が低下すると、動悸や脈が速くなるなどの症状が起こります。
・ 精神・意識・思惟活動のコントロールを行います(主神志)。
⇒ 精神活動(神志)は、現代西洋医学では脳のはたらきによるとされますが、中医薬学では五臓のはたらきとされ、特に心によりコントロールされます。
精神不安は血行不良を引き起こし顔色が悪くなるなど、精神活動と血液の運行は密接に関係しています。
・ 心の状態は、血管が多い顔面や舌に表れ、その変化は中医薬学の診断(望顔色、舌診)に利用されます。
II. 肺
・ 肺は、呼気や水分を下へ移動させる(粛降)作用を持つため、
五行では「金」に属し、経絡を通じて六腑の「大腸」と密接に関係します。
・ 呼吸を主り、人体の「気」をコントロールします(主気、司呼吸)。
⇒ 肺は、呼吸により自然界の気である「清気」を吸い込み、体内の「濁気」を吐き出すことで、
人体の新陳代謝を正常に保ちます。
⇒ 吸い込んだ「清気」と脾胃から運ばれた「水穀精微(飲食物の栄養)」により、
「宗気(血流を促進する気の一種)」を生成し、気の流れをコントロールします。
・ 呼吸による濁気の排出や、「津液(血以外の体液)」と気の全身への輸送、
汗腺の開閉の調節を行います(主宣発)。
・呼吸による清気の吸収や、津液の腎や膀胱への輸送を行います(主粛降)。
・ 脾から運ばれた津液の全身への輸送や、汗や尿の排泄に関わり、
水分代謝のコントロールを行います(通調水道)。
・ 肺の状態は、空気の通り道である鼻に表れます。
III. 脾
・ 脾は、栄養や水の吸収を主な作用とし、生命を支えるため、
五行では「土」に属し、経絡を通じて六腑の「胃」と密接に関係します。
・ 脾・胃での飲食物の消化・吸収によって生じた「精微物質」や「水液」を、全身に輸送し分布させます(主運化)。
・ 精微物質の肺への輸送や、内臓の正常な位置を維持します(主昇)。
・ 血液を脈内で運行させ、脈外へあふれないようにします(主統血)。
・ 脾の状態は口に表れ、機能が低下すると味覚異常、口内炎、口臭などの症状が表れます。
(by 漢方アドバイザー・PhD.Ar)
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