薬物にはそれぞれ異なった「薬性(特性と作用)」があり、中医学ではこの薬性を利用して「扶正袪邪(ふせいきょじゃ:正気を助ける薬物を投与し、 強化された正気で病邪を取り除くこと)」することで、臓腑の正常な生理機能を回復させる。 すなわち、病気を治すことは偏った陰陽・気血のバランスを正すことで、健康を回復することとされています。
古代中国の薬物学書籍である「神農本草経」には、「薬には酸・鹹(かん)・甘・苦・辛の『五味』があって、また寒・熱・温・涼の『四気』がある」 と書かれています。薬物ごとにすべて四気五味はことなるため、作用が異なることが書かれています。
中医薬学における用薬の基礎理論には、このほかにも『昇降浮沈(しょうこうふちん)』、『帰経(きけい)』、『君臣佐使(くんしんさし)』などがあります。
・ 「四気」は薬物の作用を説明するために重要で、中医学では、薬性の違いによって、 疾病を追い払い臓腑を養生して陰陽を平衡することで、疾病を治癒させます。
・ 四気は陰陽の意味合いも含んでいて、寒・涼は「陰」に属し人体を冷やし、 温・熱は「陽」に属し人体を温める作用をします。寒・涼や温・熱は、それぞれ薬性の方向性は同じで、強さの違いを表しています。
・ 中医学での臨床では、「寒涼薬は陽熱証を治療する」、 「温熱薬は陰寒証を治療する」ことは、投薬の上で大原則となります。これに反して、陰寒証に寒涼薬を、また陽熱証に温熱薬を使えば、 病状は悪化することになります。
・ このほかに「平性薬」というものがあり、寒熱の境界があまり明らかではなく、 薬性が比較的穏やかな薬物をさします。
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