02. 陰と陽とは? (2)
I. 「陰陽学説」による人体の構造
「陰陽学説」は中医薬学の理論体系の基礎であり、人体の構造、生理機能、病気の発生と変化の法則を説明し、臨床診断と治療の基となっている。人体のすべての組織構造は、「陰陽」を用いて区別できる。
「陽」…… 激しく運動しているもの、外へ向かうもの、上昇するもの、温熱的なもの、明るいものを表し、人体では、からだの上部、体表、背、四肢外側などを表す。「心」・「肺」は、胸腔(上部)にあるため「陽」となる。
「陰」…… 静止しているもの、内に向かうもの、下降するもの、寒冷なもの、暗いものを表し、人体では、からだの下部、体内、腹、四肢内側などを表す。「脾」・「肝」・「腎」は、腹腔(下部)にあるため「陰」となる。
II. 「陰陽失調(いんようしっちょう)」
中医学的に病気は「陰陽失調(陰陽のバランスが崩れ)」により起こるとされる。治療原則としては、陰陽いずれかの不足分を補う、または過剰分を取り除くことによって、陰陽の相対的バランスを回復させることである。
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1.「陰陽偏勝(いんようへんしょう)」
陰または陽のいずれかが過剰な状態で、「実証」とみなす。過剰な陰または陽を取り除く生薬を用いて治療する。
(1) 「陰勝則寒(いんしょうそくかん)」
陰が盛んになり、陽が損なわれることで、「実寒証」となる。「陽」の作用を持つ生薬である「温熱薬」を使用し治療する。
(2) 「陽勝則熱(ようしょうそくねつ)」
陽が盛んになり、陰が損なわれることで、「実熱証」となる。「陰」の作用を持つ生薬である「寒涼薬」を使用し治療する。
2.「陰陽偏衰(いんようへんすい)」
陰または陽のいずれかが不足している状態で、「虚証」とみなす。不足している陰または陽を補充する生薬を用いて治療する。
(1) 「陽虚則寒(ようきょそくかん)」
陽が衰え、陰を制することができなくなることで、 「虚寒証(虚による寒)」となる。「陽」の作用を持つ生薬である「温熱薬」を使用し治療する。
(2) 「陰虚則熱(いんきょそくねつ)」
陰が衰え、陽を制することができなくなることで、「虚熱証(虚による熱)」となる。「陰」の作用を持つ生薬である「寒涼薬」を使用し治療する。
通常の臨床では、陰陽の相対的バランスを保つために、陽を補う生薬(補陽薬)を使用する場合には、わずかに陰を補う生薬(補陰薬)を加え、
補陰薬を使用する場合には、わずかに補陽薬を加えるのが一般的である。
(by 漢方アドバイザー・PhD.Ar)
※「漢方の知識」のページでは、内容をわかりやすくするため、漢方理論を単純化してご紹介しています。
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