ヨクイニン(薏苡仁):生薬・漢方辞典
●医薬品原料 漢方系生薬
ヨクイニン(薏苡仁)
- 語源
学名 Coix:ギリシア古名「シュロ」の転用。
lachryma-jobi:「ヨビの涙」ヨブ神の涙の意味で、花序の印象をたとえたもの。
一方、和名のハトムギの名前の由来は、ハトが好んでその実を食べることから、明治以降にハトムギという名がついたといわれている。
また薏苡仁の薏とはハスの実の中身を指し、ハトムギやジュズダマの果実をハスの実にたとえたもの。ただし硬くて形は似てはいるが、大きさが異なる。
- 基原
Coix lacyma-jobi ハトムギ イネ科 一年生草本
- 薬用部分
種皮を除いた種子。一般にこれを「白様(しろで)」と称する。ときに外殻(総苞)をつけたままのものを「ハトムギ(鳩麦)」または「皮付き薏苡仁」と称して市販する。
- 産地
東アジア各地、日本 - 主な成分
でんぷん50%、タンパク質のグルタミン酸、ロイシン、チロシン、バリン、コイシン、脂肪油のパルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸のほか、カンペステロール、スティグマステロール、抗腫瘍成分のコイキセノライドを含む。
- 主な薬効
排膿、消炎、強壮、鎮痛、いぼ取り、浮腫に用いられる - 代表的処方
漢方処方用薬であり、解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方及びその他の処方に少数例配合されている。また、民間療法として、いぼや肌荒れに煎用するかまたは粉末を服用する。
【薏苡仁湯】ヨクイニントウ
関節リウマチの慢性化したもの、熱感、関節および筋肉に疼痛があるものの次の諸症に用いる:関節リウマチ、筋肉リウマチ、関節炎
(処方内容) 麻黄/桂枝/当帰/芍薬/朮/甘草/薏苡仁
【桂枝茯苓丸料加薏苡仁】ケイシブクリョウガンリョウカヨクイニン
比較的体力があり、ときに下腹部が痛み、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足の冷えなどを訴えるものの次の諸症に用いる:月経不順、血の道症、にきび、しみ、手足のあれ
(処方内容) 桂枝/桃仁/茯苓/芍薬/牡丹皮/薏苡仁 - 文献報告
【抗高脂血症】
2型糖尿病 db/dbマウスの脂質代謝に及ぼす雑穀の効果(日本食品科学工学会誌,2011,58,6-12)
【抗関節痛】
透析患者における関節水腫に対するヨクイニンの治療効果(日本東洋医学雑誌,1999,49,817-22)
- 参考文献
「生薬単」「日本薬局方」「中薬大辞典」「牧野和漢薬草大図鑑」「和漢薬の事典」「日本薬草全書」